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期待の若手が続きます。今回は糟谷祐介さんの登場。

最近はネット上で評価を得て、そのままパラデビューという方が増えています。時代の流れ、というとやや古臭い言葉になってしまいますか(^^;

見なれたヒトなら一目で手順構成が浮かぶはず。そう、39飛を活用するために邪魔な駒を除去するわけです。
が、今回は変化にも注目してみてください。面白いことが隠されているはずです。
33手詰です。



さて、手順としては「33香成、○玉、23成香、同玉」を繰り返して、最終的に39飛を成り込んで詰ませる展開が予想できます。

初手22角成は同玉、33香成、11玉。ここから香4枚捨てても詰む形ではありません。そこで初手は24銀から入ります。

初手から24銀、同玉、34角成、13玉、23馬、同玉、

下準備が終了し、ここから香捨ての趣向が始まります。
33香成の一手ですが、すぐに13玉と逃げると23成香と捨てられます。しかしいったん24玉とかわすと34成香、13玉、23成香という、先の手順に較べて2手長い手順を踏むことになるのがミソ。

図以下33香成、24玉、34成香、13玉、23成香、同玉(1回目)、33香成、24玉、34成香、13玉、23成香、同玉(2回目)、33香成、24玉、34成香、13玉、23成香、同玉(3回目)、33香成、24玉、34成香、13玉、23成香、同玉(4回目)、33飛成、12玉、22龍まで33手。

同様の手順で4枚の香を全て捨て去ってしまえば、33飛成と大砲が飛び出して幕。

軽い香捨ての小品趣向……なのですが、本作にはもう一つ裏作意?が存在します。それが初手24銀に対して、12玉と逃げる変化。
初手から24銀、12玉、22角成、同玉と進めて次図。

もうピンときましたか?
作意手順同様、ここでも香捨ての趣向が始まるのです!

図以下32香成、11玉、22成香、同玉(1回目)、32香成、11玉、22成香、同玉(2回目)、32香成、11玉、22成香、同玉(3回目)、32香成、11玉、21成香、同玉(4回目)、43角成、12玉、32飛成、22金、23銀成、11玉、22龍まで27手。

4香を次々と捨てていきますが、4枚目の香を捨てる時だけちょっと注意が必要。ここだけ21成香と捨てるのがポイントで、調子に乗って22成香と捨てると同玉で手の出ない形になってしまいます。
最後は作意同様飛車が成り込んで簡単な詰み。

作意と変化で2つの異なる香連捨てを表現した本作。前例があるのかどうかは判りかねますが、この簡素な形からは考えられない実に意欲的な、そして完成された作品となっています。

前回登場の大崎壮太郎さんと並び、今後の活躍が注目される作者だと思っています。

 

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