第1番 近代将棋 S56・2
13飛成、同玉、23銀成迄3手詰。
どんな世界でも、デビューした時期には一瞬の輝きがある。本作は、私の処女作で今、見直すと、やはり妙に染まっていない新鮮さを感じる。
15への逃路を押さえるために初手は必然となっているが、23銀のカラミをヨチヨチ歩きの新人にしては出来過ぎの紛れと、自負してみたい気になる。
何にしても一作目は重要な意味をもち、現在の私に与えた影響を考えさせてくれる存在であろう。
第2番 近代将棋 S56・12
44銀生、25玉、35香迄3手詰。
近将3手の詰み欄に、突然設置された年間最優秀作表彰。事もあろうに本作で、一回目を受賞してしまった。
陳腐な銀生と香の移動。2つの手筋を連結させた点が評価されたと思う。
このハプニングをきっかけにマニアから見捨てられた3手詰に没入し、大量生産することになる。
第3番 詰パラ S59・5
55龍、88玉、85龍、99玉、89龍迄5手詰。
結果的に20人の方をハメてしまった龍の限定移動。初手一発だが予想以上の効果で以後、念頭にトリックを意識しながら創るようになった。
ペンネームYYZを初起用したが結果発表で別人の様な発言をしてしまい、悔やまれるところ。このペンネームは悪形構想一辺倒にするつもりが、いつの間にか、その囲いをはずしてしまった。因みにYYZはトロント国際空港で使われている認識コードのこと。
第4番 詰パラ S60・11
74龍、35玉、46馬、同香、34龍迄5手詰。
馬を引き香がそれに応じたとき、脳裏に浮かぶ龍の意味。この瞬間こそが解図に費やした時間を一挙に忘れさせてくれる詰棋心の泉だと思う。
どんな稚拙な内容でも、こういった瞬間を少しでも感じさせてくれる作なら、十分に価値はあるはず。時折見られる、頭ごなしでけなす短評に対する作者心理を少し書いてみた。
第5番 近代将棋 S61・4
45香、同桂、35角迄3手詰。
言わずと知れた香短打。勿論、離して打つと捨合、移動合の二段防御で逃れる仕組。形に拘らなかった分、構想を浮き彫りに出来たので、自己満足に浸った記憶がある。
自作3手詰中、理論的な部類ではピカ一である今後、双璧と成せるようなものを創る自信はない。この構想は角でも表現可能であり、隠し味としては高級品に属する。
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