> サイト一覧 > 読み物 > 私のベスト10スペシャル / 第4回 塩見倫生(後)
 

第6番 詰パラ S61・7

78角、38玉、56角迄3手詰。
完全入玉で空間不足なだけに空中殺法と呼ぶには大げさ過ぎるが、真剣で斬り込むイメージはあるつもり。
順位を重視する偏差値幼稚園に3手詰を送り込むには勇気がいる。仮に俗手を含む5手詰と競争しても、その2手の差が大きく眼前に立ちはだかり容易ではない。5手詰を蹴散らして首位に躍り出るのは、私にとって永遠の目標である。

第7番 詰パラ S62・3

94龍、66玉、57金、同龍、64龍迄5手詰。
ずばり誤答狙いの作。84龍なら74歩合をかまされて攻めがマヒする。金捨ての妙味感不足を心配していたが、誌上では指摘されなかった。
偽作意物の創作ポイントは、いかに盤上の駒だけで2通りのおいしい手順を成立させれるかである。これを比較的、自然に織り込めたので60人近い方を落とし、半期賞受賞につながった。

第8番 詰パラ S62・8

74金、同香、73飛成、同玉、62馬迄5手詰。
馬の潜在威力で香を無力化し脱出間際を飛が捕らえる。
全体の流れも好きだが、私にとって主眼手は74金の打ち具合であり、飛捨てはあくまで付加したに過ぎない。
しかし、手触りの良さを前面に出そうとする作図経験があまりないので、74金の本質は分らないのが実情だ。

第9番 近代将棋 S62・9

87香、67玉、57香迄3手詰。
創作上、スランプに落ちかかったときの特効薬がこのタイプ。左右や上下で開き王手を基盤とした攻駒にリズム感をもたせて、視覚と指先の感触に訴えようというわけだ。
この動きは規則、不規則どちらでも構わず、あとは想像力の勝負で電光石火のひらめきに期待するのみ。
本作は、形の広がりを気にしなければ凝縮されたワンツーのリズムが、味わえると思う。

第10番 詰パラ S62・11

33銀生、同飛、34銀成、同飛、43銀成、同玉、52飛成迄7手詰。
まず、銀3枚の成り行き消去を高く評価してくれた解答者の方々に感謝したい。私自身、そんなに爽快感だとかユーモア性を感じていなかっただけにその思いを強くした。蓋を開けると、嬉しい誤算が飛び出してきたような感覚で、正に作図の醍醐味である。
全体の創作過程は、はっきりしないが、おぼろげに原型は43銀成以下の3手詰だったような気がする。これだけでは弱いので、逆算を敢行したところうまくレールに乗れたのだろう。
そういった意味では、開き王手形を押し進める正算専門が、手前に引くことを体得しかけた異色かつ節目の作品なのかもしれない。

以上で恥かしい限りの愚作群だったがその陳列を終わる。
全体を通したコンセプトなどないが一応、年代順に拾い集めてみた。これにより私の体内で、ことごとく変化していった詰棋観は、一目瞭然の如く、分ってもらえるはずである。
選定段階で、超悪形作は頭からはずしたので、半期賞を受賞した3手詰などは見送った。自分としては、9番辺りが視覚的に許容される、悪形のボーダー・ラインと思っている。
さて、ここまできて10作を改めて眺めると、この上なく独りよがりで、自閉症ワールドを展開させただけのような気がしてきた。特に1、5、9番は発表場の特殊性から、外部の声が聞けず、印象深さのみで選んだため、良否のほどは、よく分らない。
ところで、超マニアの人達は3手詰を組み入れたことに不快を覚えるかもしれない。私自身、この分野の蟻地獄をはい上がるような進歩性は否定しないが、生理的に染み込んだものを今さら抜き取るつもりはない。
詰棋に対する情念の炎は、完全消滅するまで燃やし続ける覚悟である。
☆ホールド・ユア・ファイアー!

 

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