祝、四百号!
家に帰ると、詰パラが届いていた。これどうしたんだろう? 一瞬考えた。
女房に聞いてみると、詰パラ編集部へ購読を申し込んだという。これは、S56年のことである。
私の詰パラへの復帰は、妻からの、誕生日プレゼントであった。
暫くして、一枚の葉書が届いた。
「詰棋校を担当してほしい。色よき返事を…」。鶴田主幹からである。
色よきに誘われて、高校担当を引き受ける。「色よい返事にて安心、検討はシッカリと!」。担当として、検討の大事さを説かれた重みのある、鶴田主幹の言葉であった。
もとより検討力の弱い私は、S58年度の解答王、木村土地氏に初めて手紙を書いた。すると、高校作品や自作の検討まで快く引き受けてくれた。
この関係で、後に、煙詰にまで発展していこうとは夢にも思わなかった。
こうして振り返ってみると、私の詰将棋は、周囲の人達の暖かい導きと、協力によって成り立っていることに気付く。高校を担当して、多くの人と知り合いになれたこと、そして作品を見る目を養わせてもらったこと。これは、かけがえのない私の財産である。
たかが趣味の世界である。しかし、詰パラを通しての、人と人との結びつきは、計り知れない程大きい。
この楽園が益々発展されることを祈りつつ、節目の記念号で、私のベスト10を発表させて頂く。
第1番 近代将棋 S45・11
12飛成、同玉、15香、21玉、13桂、12玉、24桂、同桂、21桂成、同玉、12香成、同玉、13角成、同玉、12飛、同玉、22角成迄17手詰。
塚田賞受賞作。
本局は軽い頭の体操的作品。パズル性の面白さみたいなものを、感じ取って頂けよう。
初手から13桂では、24へハネ出してきた桂に16飛がス抜かれて、ギャフンとなる。そこで、16飛を15香に打ち換えておくのが狙いである。
構想と、リズミカルな捨駒とがマッチして、会心のまとまりを得た。
第2番 近代将棋 S53・3
14桂、同銀、25香、同銀、14桂、同銀、23歩、同銀、13香成、同玉、23銀成、同玉、14銀、34玉、54飛成、35玉、55龍、26玉、15龍、同玉、25馬迄21手詰。
一応構想作である。(発表図余詰のため、38とを置いて修正した)
収束でハッキリ効果が表れる。15香の消去を鮮明に演出できた点が気に入っている。ユーモラスな玉方銀の動きも作品に彩りを添えてくれた。
詰将棋をやっていて、いちばんうれしい瞬間…解者は作品が解けた時…作者は、そう、ひとつの狙いが図化できた時であろう。本局を収録したのは、創作時の感慨が今でも残っているからである。
第3番 近代将棋 S54・2
36角、26玉、59角、36玉、37飛、25玉、27飛、35玉、26角、24玉、48角、35玉、25飛、36玉、37金、25玉、26金、24玉、57角迄19手詰。
自作としては、異色の作だ。玉方応手に、同―、がない。
3手目、59角〜11手目の48角引が変化に備えた好手である。59角の意味は6手目、36玉なら26飛〜48金。48角の意味は14手目、46玉なら45飛、56玉、66金を見ている。
玉を包囲して、絞り込んでいくような角の使い方が面白いと思う。
解説者吉田健氏―とにかく力作である。是非盤に並べてみて…。
第4番 詰パラ S58・9 小学校
55飛、77玉、66龍、同玉、57銀、55玉、76桂迄7手詰。
看寿賞受賞作。
初手が手広い。74飛や57飛では54桂合で逃れる。一間引く55飛が皮肉にも、6手目55玉と、飛を取られることになり最終、桂ハネのフィナーレへと結びついていく。
大西宏明―最後の桂跳びで詰んでしまっている、この劇的さ!
中島紀博―非常にスケールが大きく、内容の濃い作品。とても七手詰とは思えない。
当時小学校担当、柳原氏の解説文のPR効果が絶大で、私にとっては、望外の受賞となった。
第5番 詰パラ S58・10 中学校
69桂、同と、66銀、78玉、65龍、87玉、78角、同玉、76龍迄9手詰。
半期賞受賞作。
短篇代表作はと聞かれたら、本局を挙げるだろう。
解図した人のみが味わえるものかも知れないが、66銀〜65龍は心理的にも大きな効果をもたらしている。
短篇では、解者に「あッそうか、なるほど!」と思わせるものがあれば、それでいい。それが本局は、収束も含め、理想的な形で表現できた作品。
南倫生―新味十分。マレに見る一ケタ詰の傑作なり。
露天舞夜―難解度、手ざわり、品格、どれを取っても本年度最高、歴史に残る傑作。
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