第6番 詰パラ S59・10 中学校
85角、76桂合、58銀、同玉、95角、57玉、68龍、同桂成、84角迄9手詰。
半期賞受賞作。
変化を見越しての95角が狙い。手のキレ味、鋭さも本局の見どころである。短篇らしい手が、9手の中に凝縮されており、密度の濃い作品に仕上ったと思う。収束ビシッと決まるのも理想とするところ。
関口格―95角!凄い手があるものだ。前半の桂合、最後の詰上り、ゆるみなし。
清水一男―赤羽流の居合抜きにしてやられました。
第7番 詰パラ S61・6 短コン
79桂、同銀生、98金行、78玉、59飛、34龍、89角、同玉、88金打迄9手詰。
9手詰コンクール、首位。
7手詰が原案で、98金は打っていたのだが、99金配置から98金行と創り変えた。このことにより、98金行の一手に、トッカカリを無くすような、心理的効果が生じた。紛れが増えたのも相乗効果だ。
角度を変えて作品を見つめ、練り直すことにより、作品の質が、ガラリと好変したことになる。創作をしていて、この様なことは多々ある?のではないだろうか。
塚越良美―紛れが凄い。98金行は、驚異の一手。
ガマ親分―これぞ、9手詰の呼吸。
第8番 詰パラ S61・12 短コン
24銀、同銀、49飛、36玉、48桂、27玉、28歩、16玉、38馬、同歩成、19飛迄11手詰。
11手詰コンクール、首位。
着想を得てから、完成まで一年程かかった。原図はもっと大掛りだったが、コンパクト化に成功して、構想が鮮明に表現できたと思う。
新堀皇帝―32題中、一番苦しんだ。マギレも豊富で49飛〜48桂が光る。
本局は、大阪の木村土地さんと、手紙や電話で、何回かやりとりをしている。
作者同士というのは、誰もが“お山の大将”である。幸いなことに木村さんは、解図を楽しんでおられ、その解図力がまた凄い。直接意見を聞ける私は、この上ないパートナーと勝手に思い込んでいる。
第9番 詰パラ S62・3 短大
33銀生、54玉、44銀成、同玉、53銀生、55玉、56歩、同馬、66金上、同歩、44銀生、同歩、54金、同飛、47桂、同馬、54飛、同玉、53飛、64玉、46馬、同馬、65金迄23手詰。
半期賞受賞作。
形、手順共ゴチャゴチャしているが邪魔駒消去を主体に組み立ててある。
手順中、一旦56歩で強力な馬を呼び15手目、47桂で再度引き戻してから収束に入っていくあたりが気に入っている。手順前後のアヤが、いろいろあるが成立はしない。曲詰では、自作中最高の出来と思っている。
第10番 詰パラ S63・9 大学院
43と、同玉、44歩、52玉、43歩成、同玉、36と、@47金、44と右、52玉、53歩、同金、同と、同玉、54と、同玉、65と、同玉、A58角、B75玉、76金、84玉、85金、85と、64龍、95玉、94龍、94玉、85金、83玉、47角、72玉、73金、73玉、74金、72玉、82と、82玉、83金、81玉、92歩成、92飛、82歩、82飛、82金、82玉、83飛、72玉、71と、71玉、61歩成、61玉、63飛成、51玉、41香成、41玉、43龍、31玉、22歩成、22銀、22香成、22玉、23歩、23玉、56角、13玉、12角成、12玉、32龍、13玉、22銀、24玉、C16桂、16と、33銀、33桂、25香、25桂、25と、25玉、34龍、15玉、16歩、16玉、17歩、26玉、D18桂、15玉、16歩、16玉、27金、27玉、25龍、18玉、16龍、29玉、19龍、19玉、73角、29玉、28角成迄101手詰
本局は、完成するまでの経過を記してみたい。
五年間高校担当を降りたので、煙詰に挑戦しようと思いたつ。
50手位までは、スムースに逆算できたが、終盤で桂を全部使い切っているし、無理かなー、と思ったりもした。が、83飛打まで進み、“感触”を得た。後は強引な手順で、つじつまを合わせた。原図が出来上がったのだ。
検討は、あの人に―。そこで木村さんに図のみ送る。即、詰められ、案の定、潰された。そう、それを3回程、繰り返したろう。
ようやくの思いで、別案の完成図を得た。内心やっと完成した!の思いであった。しかし…
木村「「この序では、オモシローない」
である。クソ!(反発の気持)
再度練り直しだ。それから考え込むこと3ヶ月、そして面白い手順を発見したのである。幸運が訪れたともいえよう。
Aで76金は、55玉で詰まないのだ。そして、58角引に対しB66歩合は、47角でA76玉は77金85玉74角以下、B75玉は77龍76歩85金同玉74角以下、C54玉は45金63玉66龍65歩54金行同玉65角以下詰んでいるではないか! つまりAの局面で58角が成立したのだ。
ヨーシ、これならどうだー。
木村「随分ヨーなったとチャウか、58角が相当難しい手になっている」
58角を難手にしている理由は、@で52玉は43香成以下65玉となった時、76金64玉(55玉は46と)45角、66歩同金同と63角成以下詰むのに対し、作意Aで76金はダメで、B66歩合は前述の好手順で詰むのだが、これが一寸難しいことがあげられよう。
序の難関を抜け出した後の、94龍捨は、煙の方向を決定づける自慢の手である。本局は他にも、ツキがついてまわった。Cで33銀の手順前後が成立しない。Dで37金以下も詰まない。
そして好形でまとめられたのも、ツキだろう。
かくして夢であった煙詰が完成した。私にしてみれば、短篇専門で、作風と思っている“気分のいい捨駒”もちりばめることができ“集大成”といいうる作品に仕上ったのである。
本局を見て、忘れてならないのは、バックに木村さんがいたことだ。彼がいなかったら、作品をここまで高めることは、出来得なかったろう。
本局には、「妻籠宿」と命名した。
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