> サイト一覧 > 読み物 > 私のベスト10スペシャル / 第17回 南 倫夫(前)
 

詰将棋に目の肥えた皆さん方に、自作から10局を選んでお眼にかけるということは、大変なことであると、つくづく思った次第であります。と申しますのは、小生の作品群の場合、一発長打というものに乏しく、平均的なレベルでの浄化……にいつでもとまどっているからです。つまり特長ある10局の選局にはとうていおぼつかないということであります。
また、いま過去を振り返ってみると、発表図の多くに不完全のレッテルが貼られているものが見られるということに、今さらながらあきれているわけです。
しかしながら、たのまれればイヤと言えないわたくしの性格上(?)、たまの休日の自由時間を返上して、左記のとおりまとめてみましたのでご笑覧ください。
選局は、昭和602年以前のものとし、低迷していた時期も含め、各年度から、また発表各誌紙から、抽出してみました。
これらは“ナツメロ特集”ならぬ、“ナツ詰棋集”とでも言いましょうか――。

第1番 将棋世界 S35・2

88銀、同玉、97龍、同桂生、98飛、89玉、99飛、同玉、77馬行、89玉、98馬、同玉、99金迄13手詰。
初入選が、昭和三十年の近代将棋誌10月号――わたくしが高1のときでありますから、本局の発表時は、それから4年半経過しているわけです。この頃は、北原義治氏、近藤孝氏、小峯秀夫氏、小西逸生氏、鹿間郁夫氏ら諸先輩方と文通する機会を得、盛んにハガキでの詰棋についてのやりとりをお願いしました。このことは詰将棋を作図するための栄養分となったことはたしかでありました。
さて、本局、玉方桂不成をからませ、飛と馬を捌いて捨てる……といった図であり、好評を得ました。
旨くできた図というのは、案外、短時間で完成を見るというケースが多く、本局もその例にもれませんでした。

第2番 黒潮 S36・12

41銀成、同玉、63角、42玉、54桂、同歩、41角成、同玉、31角成、同玉、32金迄11手詰。
この当時、横浜の早川茂男氏が、編集兼発行人として発行されていた“黒潮”という詰将棋会報紙がありました。
同紙に昭和35〜36年中に渡って発表された作品群の中で、短篇のこの作が、“黒潮賞”の栄冠を獲得しました。
銀を角に打ち換え、桂を捨てながら、たちまちその角を、又もう一枚の角までも消し去ってしまう……というストーリーであります。
形もまァまァ悪くないし、ほかに優れた作も見当たらないことから、本局に受賞の白羽の矢が立ったのでありましょうか。
賞品に“金ペン万年筆”を頂戴したのが懐かしい。

第3番 近代将棋 S44・1

43角、15玉、24銀、同玉、33飛成、15玉、25角成、同玉、34龍、15玉、42角成、同龍、14龍迄13手詰。
今でこそ、小生の図は右上隅でのものが殆どですが、駆け出しの頃は中段玉が多かったのです。今でも変わらない作図姿勢は“短篇は収束をピシリと決める”ということでしょうか。
本局はややこしいところがなく、小生の持味(?)である、簡明な手順が良く出ているのではないでしょうか。
最終53の角を捨てきって、解後感の良さを盛り込んだつもりでありました。

第4番 詰パラ S45・12

35桂、13玉、14飛、同玉、15飛、24玉、25歩、同と、14飛、同香、34金、同玉、12角、33玉、23角成迄15手詰。
次は本誌掲載作から選んでみました。計70局の掲載作の中には、半期賞を頂戴したものも何局かあり、見方によってはそちらが上かもしれませんが、あえて本局を登場させました。
現在でも本誌上では6月号、12月号で短篇コンテストを催していますが、本局も、そういった催しに応募して、四位を得た作です。
形、手順、紛れ、それらがうまくミックスしているところが買われたらしい。
とりわけ3手目、飛を取らず、31角成として迷われた人が多かったもようでありました。
この図とて、もとはと言えば飛捨てから金捨ての収束手順からの逆算方式でまとめ上げた作。結果的に自然なたたずまいに仕上がり、非常にラッキーな気分にひたったことが思い出されます。

第5番 将棋讃歌 S57・9

31角、同玉、41馬、22玉、32馬、11玉、12銀、同玉、23桂成、11玉、33馬、同桂、22銀迄13手詰
本局、自分でも特に気に入っている作の一つです。
51馬が、41馬、32馬とにじり寄り、もう一本軽い銀捨てを放ちながら、玉方の銀と刺し違えて収束となります。
形も簡素であるし、一応完成品と言えるのではないでしょうか。
トシのせいではないでしょうが、妙手一発といった肩ヒジ張ったものより、このようなサラリとした作を好むようになってきました。

 

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