第1番 詰パラ 165号
37角、同桂生、49飛、同桂成、73角迄5手詰。
使用駒の面白さと形と手順のバランスが良い作品です。変化・紛れはありません。飛角の捨駒・離し角の詰上り・桂生・桂の2段跳ねと5手全てに狙いがあります。このような手順の構成は、私のひとつの理想に近い表現なのです。
第2番 詰パラ 182号
23飛、同玉、25飛、同桂、12馬、同玉、24金迄7手詰。
詰将棋を始めた頃の印象や初めて読んだ本の影響は大きいものです。村山隆治氏の「詰将棋教室」や、20年前に大活躍中だった吉田健氏の作風にはかなりの影響を受けています。従って7手詰で3枚の大駒捨駒は公式の様に考えていました。9手の4枚は若干難しく(攻方大駒4枚は余詰有りとよく言われる)、5手の2枚ではやや不足と思うからです。そして3枚の捨駒+あと何かひとつも基本的な考え方です。もうひとつとしては、玉方銀生・開き王手・両王手・2段活用・使用駒条件等色々な物があります。本作では離れ飛と開き王手の詰上りがこれに当たります。
最近のパラでは、大駒は開き王手と遠打ちの為に存在しているごとく感じますが、本作発表時には間違いなく大駒は捨てられるために存在したのです。そしてわたしの考え方は今でもそうなのです。
第3番 詰パラ 160号
57角、同龍、68銀、88玉、98飛、同玉、99香、同玉、89金迄9手詰。
三百人一局集の9手詰は代表作と思っていますが見ている人が多いと思うので本作を選びます。飛角図式については、かなり調べましたが発表は本作のみです。類似の可能性が高く、手順も密度も低い作品が多い分野です。その割には人気が続いています。これは詰将棋界の奇跡と言えます。
捨駒大好きの私がやっと作った連続捨駒の飛角図式、それが本作です。ただし変化・紛れなく評価は高くありませんでした。現在では飛角が活躍する飛角図式の新作は発掘困難であり、持駒の活用を主に考えるべきと思います。
第4番 詰パラ 312号
32銀、同龍、33桂、同馬、61飛、同金、51金、同玉、63桂、41玉、53桂生迄11手詰。
私が面白いと思うのは攻方と玉方の力が均衡している作品です。作意に発展性がありますし、変化と紛れにも面白い手順が多く存在します。残念ながら持駒の数が多くなりがちで、そのために嫌う人もあります。
本作は、双方の駒が激しくぶつかる典型的な作品です。一見して強力な守備駒を53桂打で剥がすように見えますが、意外にも3連続捨駒で守備駒の53へのキキを全て外すのが狙いとなっています。53桂打は作意には登場しません。
本作、実は発想から発表まで15年もかかっています。狙いの61飛の後の51金がうまく成立しなかったためです。文字通りの苦心作です。
第5番 徳島新聞 S45?
62金、同金、41金、61玉、52銀打、71玉、62銀生、81玉、72銀、同玉、73金、81玉、82金打迄13手詰
発表作170余の内でパラ以外は近将の3手詰2作と本作のみです。古くからの読者でもこれを知っている人は少ないと思い選びました。条件作は好き嫌いがかなり分かれますが、私は本作で分かるように好きです。ただし、より純粋な条件を好みますので合駒で条件が崩れる場合等は避けます。駒の種類を性能で分類すると、飛角・金銀・桂香歩にわかれます。この3つは性能に差があるために必然的に手順にも差が表れます。これが私がこれらの条件を好む理由です。一方、手順の幅を狭くすることを意味するわけですから手順本位の人からは嫌われることになります。
金銀図式(金持図式と呼ぶ人もある)は発展性の少ない条件です。発表作は主に、対称・密集等の形から出発したものが多いと言えます。これに対して私は自由な形での、捨駒・銀生・手順の趣向性等を狙いました。本作は金銀の囲いの外へ玉を逃がす味が狙いとなっています。金銀だけで実際に外へ出せば詰ます事は不可能ですが、実は玉を狭い端に追っているだけです。81銀が玉を囲っている大事な駒に見えれば作者の狙いは一応の成功ですがどうでしょうか?
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