> サイト一覧 > 読み物 > 私のベスト10スペシャル / 第20回 田原 宏(後)
 

第6番 詰パラ 173号

16龍、同玉、36馬、13馬、17香、同玉、29桂、同銀生、27金、18玉、19香、同玉、37馬、18玉、28馬迄15手詰。
1筋縦一線の作品は少なく、しかもその多くはパラでこの条件での募集が行なわれた時のものです。本作もその時の応募作です。比較的作りにくい条件ですが逆に作者には刺激になるので多くの発表がありました。このような募集も面白いと思います。
この条件では2または3筋に手掛かりを付けるまでと、まとまった収束がポイントになります。16龍に28玉は18龍から36馬の両王手で詰みます。36馬の手掛かりが出来た後は17香から、本作成立のポイントとなった29桂となります。
初形曲詰で試行錯誤のなかで割り切れた収束が見付かった時は非常に嬉しいものです。

第7番 詰パラ 186号

13香、同玉、14香、同玉、15香、同玉、16香、同銀成、同歩、同玉、25角、同桂、27銀、同玉、26飛、37玉、38金迄17手詰。
4香連打を分類すると、(1)打った香が消えるタイプ、(2)香が消えないタイプの分類があります。一方、(A)不動玉、(B)玉が移動するでも分けられます。2Bタイプは色々な形があり古来、追趣向に度々登場しています。2Aタイプは作例がないし連打のイメージは少ないです(19香・18香・17香以下の形)。1Aタイプが通常多くの人が4香連打から連想する作品でこの分野での花形です。目的は玉の逃げ道ふさぎが多いです。私もこのタイプを作っていますが目的は異なります。
本作は1Bタイプですが、作品例は少ないです(私は他には知らない)。結局は香を歩の代わりに使うだけです。珍しいだけの作品とも言えます。

第8番 詰パラ 218号

44と、46玉、76飛成、56歩合、37銀、47玉、67龍、57歩生、58龍、同歩生、97龍、57桂合、同龍、同香生、39桂、同馬、48歩、同馬、36銀直、46玉、45と迄21手詰。
捨駒が駒の量的な消失ならば、不成は駒の性能の質的な消失にあたる所に魅力があります。従って成った時と不成の時の性能差が大きいほど不利感が強く魅力があります。歩は全ての駒の中でこの差が一番大きく、この魅力に取り付かれて歩不成シリーズを作っています。玉方の同一歩の二度不成は作品例が多く、合駒の歩の不成も幾つかあります。
本作は合駒の歩の二度不成です(他にもあると思うが私はこれしか知らない)。発表時には残念ながらこれに対するコメントがありませんでした。歩の不成は制約が多く発展性が少ないのが不満です。

第9番 詰パラ 365号

13香、同金、12歩、同金、21桂成、同玉、43角、11玉、22銀、同金、13香、同金、23桂、同金、21角成、同玉、32銀、11玉、12歩、同玉、23銀成、11玉、12金迄23手詰。
桂香歩等の捨駒は単独では一局を支えるのは難しいが組み合わせることによりひとつのリズムが発生します。本作は守備金を取るための駒の打ち換えと、金を移動させるための打ち捨てがテーマとなっています。二度の13香に対する合駒の変化は2手短いか同手数駒余りになり若干複雑です。普通は変化はアクセントとなり良いのですが本作ではリズムを止めるので良し悪しです。狭い所での桂角銀の打ち換えと金の翻弄との組み合わせは、趣向味のある短中編という私のひとつのテーマです。

第10番 詰パラ 202号

65と引、同角、44銀生、同玉、45と、同玉、46歩、44玉、66角、55銀合、同角、同玉、65と、同玉、76銀打、66玉、44角、55角合、同角、同玉、33角、44角合、同角成、同玉、22角、33角合、同角成、同玉、11角、22角合、同角成、同玉、21と、同玉、31歩成、同玉、42香成、21玉、13桂、11玉、33角、22角合、同角成、同玉、44角、33角合、同角成、同玉、55角、44角合、同角、同玉、66角、55角合、同角、同玉、85龍、同銀、77角、66角合、同角、同玉、93角、84角合、同角成、同桂、44角、55角合、同角、同玉、33角、44角合、同角成、同玉、22角、33角合、同角成、同玉、11角、22角合、同角成、同玉、44角、33角合、21桂成、同玉、91飛成、61桂合、同龍、同金、13桂、22玉、33角成、同玉、55角、44角合、同角、同玉、66角、55角合、同角、同玉、73角、44玉、45歩、同玉、46金、44玉、55角成迄109手詰
角打ち・角合による玉の斜め追いが狙いです。角打ち場所の非限定はたえずあります。往復2回は当時は初めてでしたが、その後2回半、4回が発表されています。軽趣向の予定が折り返しに苦心するうちに複雑になり発表時の正解者は3名だったと思います。
1回目は43香を移動させて2回目の飛合に備える事が目的です。これは私が長編趣向に慣れていなかったためで飛を途中で捨てた事で作りづらくなってしまいました。誤解答は折り返しで発生しました。1回目31歩成に対し11玉に変別の順があります。これは33角、22角合、同角成、同玉(ここで32ととすると変別)、44角、33角合、同角成、同玉、55角、44角合、32と以下詰みです。次の折り返しは派手であるが問題はありません。最後の折り返しは2つの紛れがあります。22同玉に対し44角、33角合の代わりに、(1)11角、同玉、91飛成、61角合の順、これは61銀引で逃れ、(2)44角を省き21桂成、同玉、91飛成、61桂合の順、これは41角合、32角、11玉、41龍、同銀、33角、22桂合、同角成、同玉、23角成、21玉、13桂、11玉、33馬、22歩合以下逃れとなります。最後は62金の移動により73角で収束します。
短編の作図感覚で作った長編と感じます。私は短編でも、駒のさばきを重視しませんが長編でも同じで、長編作家とは異なる作品になると思います。

 

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