今月号(※94年1月)より新たに、詰将棋講座を始めようと思います。まあ、できるだけ多くの方々に面白さを分かって頂こうという事で、易しいものから行ってみましょう。
まず第1図をご覧ください。
[第1図]
どうです、解けましたか?
23歩と打つ手は、11玉、33馬、同桂、31飛、21合で、どうも後が続きませんね。
32とは、同玉、42飛、31玉……これもダメですか。
【正解】
32飛、11玉、33馬、同桂、12歩、21玉、31とまで7手詰
マニアの方は、さほど時間がかからずに解けたでしょう。見た瞬間解けた!という方もいらっしゃるかと思います。
▲マニ夫「アホか、何がオモロいねんこれ!?」
まあ、そうおっしゃらずに…。
では、第2図はどうでしょうか。
[第2図]
似たような図ですね。第1図と違うのは、持駒だった飛車が34に置かれている点です。
じゃあ、先程と違い、初手32飛成と成れるわけですが、どうでしょう。
32飛成、11玉、33馬、同桂、12歩
となると、これは打歩詰(禁手)になってしまいます。うーむ。
【正解】はもうお分かりですね。
32飛生、11玉、33馬、同桂、12歩、21玉、31とまで7手詰。
[第2図詰上り]
「生」は成らずの事で、「不成」又は「生」と表示する。
つまり、12歩と打ったときに玉が21へ逃げられるように、成れるところをあえて成らずに32飛生、とするわけです。
△白人(シロト)「なるほど! 実戦じゃ“成らず”なんて出て来ないよね。最初に第1図を見せてくれなきゃ、絶対解けなかったなァ」
打歩詰はダメよ、というルールが将棋にあるために、このような不成の手筋が発生します。攻める側からして一見不利に思える“成らず”がどれだけ詰将棋を面白く、またより深遠なものにしているか計り知れません。
打歩詰打開の手段としては、不成だけでなく他にも色々な高等戦術がありますが、今回はこの不成だけで、さらに基本的なものに絞り込んで紹介してみましょう。
[第3図]
第3図は応用問題です。
△白人「23歩成、11玉、12と、同玉、15香、22玉で打歩詰かァ。これってさァ、結構難しいんじゃない?」
▲マニ夫「お前、わざとはまっとんのか? エエ加減にせェよ」
【正解】
13桂成、@同香、23歩生、11玉、12歩、同玉、32龍、11玉、22龍(又は22歩成)まで9手詰。
@同桂は、23歩成、11玉、31龍以下。11玉は、12成桂、同玉、23歩成以下。
[第3図詰上り]
これは“歩の成らず”でしたね。初手に桂の成り捨てが入って、作品としてまあまあ格好がついたように思います。いきなり不成から始まるより、味がいいですよね。
△白人「12香がもし歩だと、どうなるのかな?」
▲マニ夫「そら@の変化が詰めへんやないけェ」
△白人「あ、そうだよね。じゃ桂馬だとどう?」
▲マニ夫「勝手に考えとけ!」
第4図はこれまでと少し毛色の変わった作品です。第2図では飛車、第3図では歩と、いずれも直接王手をかける駒の“成らず”が発生しましたが、さて、これは?
[第4図]
【正解】
12飛、同玉、32香生(A図)、11玉、12歩、22玉、23角成(又は歩成)まで7手詰
[A図]
△白人「へェ、アキ王手の成らず。こんな手があるんだねェ」
直接王手をかけない駒の不成。例えば、飛と角、飛と桂、角と歩等。色々な組み合せによってバラエティに富んだ不成手筋が考えられます。
△白人「第4図は、持駒“飛”じゃなくて“金”だと、23金、11玉、12金、同玉、32香生以下9手詰だよね。こういう創り方もあるんじゃないの?」
▲マニ夫「おォ、たまにはマシなこと言うのう。まァそれは好みの問題や」
というわけで、不成手筋あれこれを見てきました。ほんの一例に過ぎませんが、ご理解頂けましたでしょうか。
では最後に、第5図をお考え下さい。9手詰です。
[第5図]
△白人「紛れがいっぱいありそうで、難しい。マニ夫さんはもう解けた?」
▲マニ夫「こんなん5秒や」
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