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詰将棋パラダイス1999年2月号のヤング・デ・詰将棋で募集した「9手以内の短編で最も印象に残っているものは?」という質問に多数のお答えをいただきました。
スペースの都合により本誌で掲載することのできなかったものをここで紹介します。

「後編」である今回は、お答えいただいた方に強烈な印象を与えた作品を集めてみました。難問ですが、短編詰将棋の粋が集まったと思います。

[第1図]伊藤 果氏作

江垣美香さん推薦。まずはご一考を。

初手に銀を動かせば簡単に詰んでしまいそうですが、いずれも34玉で逃れます。初手32金と寄ってみるのも、43玉、14銀生、32玉で捕まりません。手数を知らされていないとかなりの難問になるお手本のような問題です。「重ね打ち」という不利感は、この作者お得意の手法ですね。

正解―32金打、43玉、14銀生、34玉、33飛成まで。

[第2図]山岸栄一氏作(昭和47年ごろの近代将棋)

塚越良美「当時1ケタ物で解けない図はないとうぬぼれていた鼻を折られた作」

簡素な形につい手が出てしまいそうですが、少し考えれてみると、この作品がどれだけ難解作か思い知らされることでしょう。解図のポイントは13玉と逃げられた場合の変化。これは14銀、同玉、24飛という手順でしか詰みません。飛車を温存して13に誘う、これが初手のヒントになりますね。

塚越良美「4手目34玉の変化の52馬が盲点に入り、不詰と思った」

正解―13角、33玉、53飛、44玉、55銀、53玉、35角成、43玉、44馬まで。

[第3図]行き詰まり氏作(詰将棋パラダイス397号幼稚園13)

由良祇毘「中学校時代3手詰に誤解者が続出したと聞いて驚きました(当時はパラの解答者の方々は凄い人たちばかりと思っていましたし…。数年後自分がなっているとは思いもしませんでした)」

鑑賞室の第1回でもご紹介した「新たなる殺意」です。詳しい説明はそちらを参照ください。個人的にはこの作品にリアルタイムで接することができなかったのがいまだに残念でなりません。

正解―72香成、97龍、73龍まで。

[第4図]愛 上夫氏作(昭和59年詰棋めいと創刊号)

片山倫生「逆打歩詰誘致!! 大げさでなく、生涯かかっても解けないかもしれないという可能性を秘めた過激な手順。『未知との遭遇』がぴったり当てはまる忘れじの作品です」

面妖な配置ですが初手は69王か66飛ぐらいしかありません。初手69王には68歩が痛打! 同王と取らされては詰将棋になりません。次に初手66飛。同香ならば42角成で一発なので合駒する一手ですが、玉方の持駒を見れば桂しか合駒できません。そこで69王と引けば……? なんと今度は68歩が打歩詰の禁手! よって77桂の一手となるのです! 片山氏(行き詰まり氏の本名)をもってこの言葉を言わしめるだけの作品と納得するのみですね。

正解―66飛、76桂、69王、77桂、同銀、97玉、89桂まで。


ヒトが詰将棋に惹かれるとき、そこには将棋の駒の動きを端的に表したものが多かったのに比べ、今回は手順の目的に目をみはるものを持った作品が多いように感じます。

それはまさに、詰将棋の持つ奥深さの一端を示すものなのでしょう。

 

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