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加藤徹さんの作品から、後手の持駒制限モノをご紹介します。

持駒制限については、「第3話 飛車しかない!」にも詳しく説明してありますが、ふつう、詰将棋では後手の持駒は、盤上と攻方の持駒以外「残り全て」が与えられています。よって合駒という防御手段をもった複雑玄妙な作品ができるのですが、逆にそれを排除することによって、易しく、よりパズルチックな詰将棋を作ることも可能なのです。

さて、今回は双方持駒なし。と金の城壁に囲まれて一見安泰にみえる玉将ですが、合駒がないため四方から遠く睨みつける龍馬の威力で見事詰ませることができます。
11手詰です。


初手15龍という王手もありますが、同玉でどうにもなりません。ということで初手は13桂の一手となります(ここで成るか成らないかの選択がありますが、とりあえず無視します)。

先にも書いたとおり、この作品では後手に持駒がありませんから、25と引と守ることになります。もちろん25と寄では13の桂馬を再度動かして合駒のない詰上りですね。
この「桂跳ね→と金の移動合」が本作のキーポイント。以降、王手をかけられるように、また龍馬を抜かれないように注意しながら桂馬を跳ねつづけていきます。

初手から、13桂不成、25と引、54桂、26と引、46桂、27と、34桂、26と直、22桂成、25と寄、21桂成まで11手

最初に提示した問題をまず解決しておきましょう。9手目の王手は22桂成しかないのですが、ここでもし初手に桂を成っていたら、22成桂と入る隙がなくなって詰まないのです。ここまできてようやく初手の桂馬は成ってはいけないということがわかります。

また本作は攻方のと金や玉方の香によって、桂馬の移動場所が完全に限定されていますし、さらに成or不成も限定されています。こうなってくると「一〜二段目では桂馬は必ず成らなければいけない」という将棋の基本ルールまでもがとてもうまく利用されているようで、脱帽するしかありません。

花火のように打ち上げられていく桂馬の動き。そして大駒が王手の主役のはずなのに、動かしているのは小駒ばかり、というあたりにもこの作品のユーモアを感じてしまいますね。

 

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