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前々回に続き、加藤徹さんの作品から後手の持駒制限モノをご紹介します。

そろそろ慣れていただいたと思いますが、本作品は後手の持駒に制限が加えられています(詳しくは「第3話 飛車しかない!」参照)。持駒制限の魅力である、シンプルな構成上で表現される易しい趣向にぜひご注目ください。

今回は後手の持駒は飛車のみ。見た目通り、飛車を打って飛車合いの繰り返しですが、一段目に並んでいる3枚の金が攻略のポイントとなります。手数は長いですが、趣向の1サイクルは12手。この12手さえ発見できれば解けたも同然です。
61手詰です。


詰将棋には序奏があると本番の趣向が引き立つことが多いようですが、本作ではいきなり目玉が飛び出します。
初手91飛!(次図)が鋭い狙いをもった一手です。

例えば92飛と一マスでも近付けて打てば、相手はすかさず86玉と逃がしてくるでしょう。以下96金、77玉と逃げて王手が続かなくなります。もし91飛と打っていたら、この局面で71飛成と金を取って手がつながる、といった仕組み。

初手から91飛、96飛、同飛成、同玉、91飛、95飛、同飛成、同玉、91飛@86玉、96金、77玉、

飛車合をして手数を稼ぐ玉方ですが、流れにのって@で94飛車合は同飛成、同玉、93飛であっという間に詰んでしまいます。そこで86玉とかわしますが、96金、77玉となった局面がこれ。

初形で9筋にあった玉が2路右に移動しました。以下同様の手順を繰り返して右端に追い詰めていきます。

図以下71飛成、76飛、同飛成、同玉、71飛、75飛、同飛成、同玉、71飛、66玉、76金、57玉、51飛成、56飛、同飛成、同玉、51飛、55飛、同飛成、同玉、51飛、46玉、56金、47玉、31飛成、36飛、同飛成、同玉、31飛、35飛、同飛成、同玉、31飛、26玉、36金、17玉、11飛成、16飛、同飛成、同玉、11飛、15飛、同飛成、同玉、11飛、14飛、同飛成、同玉、13飛まで61手

上でも書いたように、手数は長くても1つのサイクルさえ解明できればあっというまに解けてしまいます。1サイクル解明にちょっとした考え所をあたえておいて、そこから一気に突っ走る爽快感――これこそが加藤さんのおもちゃ箱ワールドの真髄の一つでもあるようです。

 

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